がん治療には身体的にも精神的にも負担が大きいです。
時間が経ち、こころが落ち着いてきたときに襲ってくるのが経済的負担です。がん治療は長期化することもあり、多くのお金が必要になります。
また治療に専念することで、仕事を休み収入が減少します。収入減による経済的な負担を軽減するため、障害年金を活用しましょう。
障害年金を受給できれば、毎月一定額お金がもらえるので、安心して治療ができます。
本記事では、障害年金の基本や申請方法などを解説しています。この記事を読むことで、収入減に対する不安が軽減でき、がん治療に専念できるでしょう。
治療に専念したいあなたを支える:障害年金とは?
障害年金は病気やケガによって日常生活や仕事などが制限されるようになったときに、受給できる年金です。
障害認定日に特定の症状があれば、障害年金が支給されます。
障害認定日とは?
障害の程度を定める日のことで、原則、障害の原因となった傷病の初診日から1年6か月を経過した日をいいますが、1年6か月以内にその傷病が治った場合(症状が固定した場合)は、その日をいいます。
参照:政府広報オンライン 障害年金の制度をご存じですか?がんや糖尿病など内部疾患のかたも対象です
20〜65歳になるまで請求でき、障害手帳がなくても受給可能で、ほとんどの傷病が障害年金の対象となります
- がん
- 糖尿病
- うつ病
- 双極性障害
- 難病 など
がん患者さんも支給対象なので、治療中なら申請してみましょう。
がん治療中の経済的な負担を軽減:障害年金のポイント
がん治療は障害年金を受給できる傷病の対象です。
目に見える身体的な障害(人工肛門や新膀胱の造設)だけでなく、抗がん剤の副作用である倦怠感(だるさ)や末梢神経障害(しびれ、痛み)などの内部障害でも支給の対象となる場合があります。
お金が支給される可能性があるので、障害年金の申請を行いましょう。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、老齢年金と同様、障害厚生年金の方が保障が充実しています。
国民全員が受けられる障害基礎年金
障害基礎年金は年金加入者が受けられる年金制度です。
初診日に国民年金に加入している人や生まれつきの障害がある人などが対象です。
- 自営業
- 無職の人
- 20歳以上の学生
- 会社員の配偶者に扶養されている人
- 生まれつきの障害がある人
- 子どもの頃に障害を負った人
- 60歳~65歳で老齢年金を受給していない人
障害基礎年金の受給額は以下のとおりです。
等級 | 支給額(年間) |
---|---|
1級 | 1,020,000円+子の加算 |
2級 | 816,000円+子の加算 |
3級 | - |
子の加算 (高校卒業までの子どもがいる場合) | 2人目までは1人につき234,800円 3人目からは1人につき78,300円 |
会社員・公務員が受けられる障害厚生年金
障害厚生年金は会社員・公務員が受けられる年金制度です。
障害基礎年金と障害厚生年金の2種類が受給できるので、手厚い保障制度となっています。
- 障害厚生年金加入者
- 会社員
- 公務員
障害厚生年金の受給額は以下のとおりです。
等級 | 支給額(年間) |
---|---|
1級 | (報酬比例の年金)×1.25+子の加算 |
2級 | (報酬比例の年金)+子の加算 |
3級 | (報酬比例の年金) 最低保証額:612,000円 |
障害手当金 | (報酬比例の年金)×2 最低保証額:1,224,000円 |
子の加算 (高校卒業までの子どもがいる場合) | 2人目までは1人につき234,800円 3人目からは1人につき78,300円 |
報酬比例とは?
報酬比例部分とは、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金のいずれの給付においても、年金額の計算の基礎となるものです。
年金の加入期間や過去の報酬等に応じて決まるもので、計算方法は次のとおりです。報酬比例部分※1 = A + B
A:平成15年3月以前の加入期間
B:平成15年4月以降の加入期間
参照:日本年金機構 報酬比例部分
障害年金は障害の程度によって3段階に分かれる
障害年金の受給額は、障害の程度によって異なります。
等級 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態 |
2級 | 必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働 によって収入を得ることができないほどの障害 |
3級 | 労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態 |
障害手当金 | 傷病が治ったもので、労働が制限を受けるか、労働に制限を加えることを必要とする程度のもの |
自身がどの状態か判断できないときでも、申請してみましょう。
提出した書類を確認し、日本年金機構が判断してくれます。
申請手続きは簡単!:障害年金の申請方法
原則として、初診日から1年6カ月後に障害年金の請求ができます。しかし、1年6カ月経過するまでに、書類などを準備しておくと、スムーズに障害年金を受給できます。
障害年金を申請する方法は以下のとおりです。
- 初診日を調べる
- 年金事務所などで「保険料納付要件」を満たしていることか確認する
- 初診日を証明する書類を揃える
- 医師に診断書を書いてもらう
- 「病歴・就労状況等申立書」を作成する
- その他の必要書類を揃える
- 請求書類を提出する
- 審査結果が送付される
- 年金が振り込まれる
がんと診断を受けた日のことです。
年金の加入や保険料の納付を調べるとき、初診日を基準に判定されます。
初診日の前日の時点で保険料を納めていたか「保険料納付要件」を確認しましょう。
役場の国民年金課や年金事務所で調べてもらえます。
がんと診断した医療機関の担当医師に「受診状況証明書」を記載してもらいます。
「受診状況証明書」は役場の国民年金課や年金事務所、日本年金機構のホームページで入手できます。
担当医師に診断書を書いてもらってください。
診断書を受け取ったら、開封し中身し、実態と異なっていないか確認してください。
日本年金機構のホームページから「病歴・就労状況等申立書」をダウンロードして、記入してます。
がんの発病したときから医師に診断を受けるまでの経緯や、受診状況、治療の経過などを書いていきます。
自身の病状を詳細に伝えるための書類ですので、わかりやすく、読み手に伝えるように書いていきましょう。
年金請求書や年金手帳、戸籍謄本、住民票などが必要になります。
年金請求書は役場の国民年金課や年金事務所でもらえます。
書類がそろったら、コピーを取っておきましょう。提出後に内容確認が必要となる場合があります。
提出先は以下のとおりです。
請求する年金 | 提出先 |
障害基礎年金 | 役場の国民年金課 |
障害厚生年金 | 年金事務所 |
書類の提出から約3〜4ヶ月に結果が届きます。
審査結果を確認しましょう。
支給が決まった場合、振り込まれるまで約2カ月かかります。
障害年金を受給するための3つの条件
障害年金を受給するには、3つの要件を満たす必要があります。
- 初診日要件
- 障害状態該当要件
- 保険料納付要件
初診日要件 | 初診日に年金制度に加入している |
---|---|
障害状態該当要件 | 障害認定日に障害等級に該当している |
保険料納付要件 | 下記に記載 |
保険料納付要件とは、初診日の前日に以下のいずれかの要件を満たしていることです。
参照:政府広報オンライン 障害年金の制度をご存じですか?がんや糖尿病など内部疾患のかたも対象です
- 初診日のある月の前々月までの国民年金の被保険者期間の3分の2以上の期間について、保険料納付済期間または保険料免除期間であること
- 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと
障害年金が支給されるまでの期間
障害年金は準備をはじめてから年金が支給されるまで、少なくとも6〜7ヶ月ほどかかります。
書類の審査に時間がかかり、書類の提出から結果が届くまで約3〜4ヶ月の時間を要します。
書類のミスがあり再提出になると、さらに期間が伸びます。
体調が悪く大変だと思いますが、障害年金の申請書類をミスなく記入し、早めに提出するようにしましょう。
申請結果が書類送付・振込されているか確認
申請書類を提出し、順調に審査が進むと約3〜4ヶ月後に結果が届きます。
障害年金が支給される場合は年金証書が届き、以下の重要事項が記載されています。
- 障害年金を受給できる権利を取得した日
- 障害等級
- 次回診断書提出年月
障害年金が支給されない場合は、「不支給決定通知」または「却下通知書」が届きます。
「不支給」とは、審査の結果障害の程度が基準に満たなかったことです。
「却下」とは、初診日要件や保険料納付要件を満たさないことで、障害の程度の審査まで進まなかったことです。
どちらの通知であっても、結果に納得できないときは再審査ができます。
障害年金と他の制度との違い
がん治療で利用できる公的制度には、障害年金以外に以下のものがあります。
- 高額療養費制度
- 医療費控除
- 傷病手当金
それぞれの違いを解説していきます。
高額療養費制度との違い
高額療養費制度とは、1ヶ月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が後日払い戻される制度です。
障害年金とは異なり、支払った治療費が戻ってきます。
高額療養費制度があることで、実質的な医療費の自己負担額は軽減します。
障害年金と高額療養費制度は併用可能です。
利用できる制度は使っていきましょう。
医療費控除制度との違い
医療費控除制度とは、所得控除の1つであり、1年間の医療費が10万円を超えた場合に、その超過した金額が所得から控除されます。
医療費控除を適用すると、支払う税金が少なくなります。
障害年金と医療費控除制度は併用可能です。
がんの治療費は高額になるので、医療費控除を活用して税金の負担を減らしましょう。
傷病手当金との違い
傷病手当金とは、病気やケガで会社を休んだときに受けられる給付金制度です。
休業中に被保険者とその家族の生活を保障するための制度です。
会社員や公務員のみが支給対象であり、自営業や専業主婦(主夫)は支給されません。
傷病手当金の支給期間は、支給が開始した日から通算1年6ヶ月です。
障害年金と傷病手当金は併用できません。
両方が受給できる場合、障害年金が優先されます。
障害年金のよくある質問
まとめ:障害年金で安心して治療に専念しよう
がん治療は長期化しやすく、治療費や生活費などの経済的な負担が重くなります。
がん患者さんの経済的な負担を軽減できる制度として、障害年金があります。
等級 | 障害基礎年金支給額 (年間) | 障害厚生年金支給額 (年間) | 障害の状態 |
---|---|---|---|
1級 | 1,020,000円+子の加算 | (報酬比例の年金)×1.25+子の加算 | 他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態 |
2級 | 816,000円+子の加算 | (報酬比例の年金)+子の加算 | 必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働 によって収入を得ることができないほどの障害 |
3級 | - | (報酬比例の年金) 最低保証額:612,000円 | 労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態 |
障害手当金 | - | (報酬比例の年金)×2 最低保証額:1,224,000円 | 傷病が治ったもので、労働が制限を受けるか、労働に制限を加えることを必要とする程度のもの |
子の加算 (高校卒業までの子どもがいる場合) | 2人目までは1人につき234,800円 3人目からは1人につき78,300円 | - |
障害年金を受給できると、安定した収入が手に入るので治療に専念できるでしょう。
一日でも早く健康を取り戻すために、治療に専念してください。
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