がんと診断されたら知っておきたい!傷病手当金で生活を安定させよう

体の調子が悪くなり、病院で見てもらうとがんと診断。気持ちが落ち着いたころに襲ってくるのが、経済的な負担です。

がん治療は長期化することが多く、高額な医療費がかかります。病状によっては仕事を休まないといけなくなり、収入がなくなります。

十分な貯金や医療保険に入っていれば対応できますが、誰しもが備えをしているとは限りません。

そのような収入減を補う制度として傷病手当金があります。傷病手当金は会社員が病気やケガで仕事を休むときに、お金が支給される制度です。

本記事では、病気やケガで収入が減少したときに利用できる傷病手当金をまとめています。記事を読むことで、がん患者さんの経済的な不安を軽減し、治療に専念できるようになるでしょう。

目次

傷病手当金とは?

傷病手当金は病気やケガで会社を休んだときに受けられる給付金です。

日本国民が加入している健康保険の保障の1つですが、国民健康保険では保障されません。

保険の種類加入者保障の有無
健康保険会社員・公務員傷病手当金・出産手当金
国民健康保険自営業・専業主婦・学生

休業による収入減から、がん患者さんと家族の生活を保障するために設けられた制度です。

会社に勤めているサラリーマンが対象であり、自営業や専業主婦(主夫)、学生は対象外です。

会社員・公務員は家族を養っていることが多く、休業による生活負担が大きくなります。

そのような状況で傷病手当金が受け取れると、がんの治療に専念でき、経済的な安心感も得られます。

傷病手当金を受けられる4つの条件

傷病手当金を受けるには、4つの条件をすべて満たさないといけません。

  1. 業務外の病気やケガであること
  2. 療養のために仕事につけないこと
  3. 給与が支払われないこと
  4. 連続する3日間を含む4日以上仕事に就けなかったこと

それぞれを解説していきます。

①業務外の病気やケガであること

傷病手当金を受けるには、業務外の病気やケガである必要があります。

業務内の病気やケガであれば、労災保険の休業補償給付が対象となるため、傷病手当金は受けられません。

支給対象
支給対象外
  • 業務外の病気やケガ
  • 自費診断でも就労できないことが証明できれば支給
  • 自宅療養の期間
  • 業務上・通勤災害のよるもの(労災保険の休業補償給付)
  • 病気と見なされないもの(美容整形など)

がん患者さんであれば、業務外の病気に該当するため傷病手当金を受けられます。

②療養のために仕事につけないこと

病気を治すために仕事ができないときに、傷病手当金は支給されます。

仕事を休むときは、療養担当者(医師)による診断が必要です。

自己判断での休業は対象外となるので、気を付けてください。

③給料が支払われないこと

傷病手当金は、休業中に会社から給与が支払われないことが条件です。

ただし、給与の支払いがあっても傷病手当金の額より少ない場合、その差額が支給されます。

例えば、有給休暇を取得して給与が5万円支払われ、傷病手当金の支給額が10万円であれば、差額の5万円が傷病手当金として支給されます。

④連続する3日間を含む4日以上仕事に就けなかったこと

傷病手当金を受けるためには、連続する3日間を含む4日以上仕事ができないという条件があります。

参照:全国健康保険協会

連続する3日間を待機期間といいます。

この待機期間を満たさないと傷病手当金が支給されません。

待機期間には、土日祝などの公休や有給休暇も含まれます。

傷病手当金の受給を検討しているなら、待機期間を忘れないようにしてください。

傷病手当金の支給期間は通算1年6ヶ月

傷病手当金の支給期間は通算1年6ヶ月です。

支給期間は通算して計算されます。

参照:全国健康保険協会

2022年1月までは支給開始から最長1年6ヶ月でしたが、制度が変更になりました。

これにより、仕事に復帰後に再発しても傷病手当金の支給がされるようになります。

傷病手当金の支給金額は年収によって異なる

支給される傷病手当金の額は、年収によって異なります。計算式は以下の通りです。

1日あたりの金額=(支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷12÷30×2/3

※支給開始日とは、一番最初に給付が支給される日

参照:全国健康保険協会

図の例だと、

(26万円×2ヶ月+30万円×10ヶ月)÷12÷30×2/3=6,520円

となり、1日当たりの支給金額は6,520円です。

傷病手当金の申請方法

傷病手当金の申請は、4つの書類を記入し、加入している健康保険協会に送ります。

ここでは全国健康保険協会を説明します。加入している健康保険協会によって異なりますので、各自確認してみてください。

4つの書類
  • 申請者情報
  • 申請内容
  • 事業主証明
  • 療養担当者の意見書

詳細な流れは全国健康保険協会のYoutube動画で解説してくれます。

他の制度を利用すると傷病手当金が支給停止(調整)される

傷病手当金は他の制度と併給(一緒に支給すること)ができません。傷病手当金と併給が考えられるのは、以下の制度です。

  • 出産手当金
  • 老齢年金
  • 障害年金または障害手当金
  • 休業補償給付

傷病手当金と出産手当金が受けられるとき

基本的に出産手当金を受け取ったときは、傷病手当金の支給はされません。

しかし、障害手当金の額が出産手当金よりも多い場合、その差額が支給されます(支給調整)。

資格喪失後に老齢(退職)年金が受けられるとき

資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が、老齢年金を受給するとき、傷病手当金は支給されなくなります。

ただし、老齢年金の額が1/360が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

健康保険の継続給付とは?

資格を喪失する日の前日までに継続して1年以上被保険者であった人は、資格を喪失した際に現に受けていた傷病手当金及び出産手当金を引き続き受けることができます。

傷病手当金は1年6か月間、出産手当金は出産前後合わせて原則98日間の範囲内で、支給を受けることができることになっていますが、この期間から被保険者である間にすでに支給を受けた残りの期間について受けることができます。

参照:全国健康保険協会 協会けんぽ 資格喪失後の保険給付

障害厚生年金または障害手当金が受けられるとき

傷病手当金の受給期間が残っていても、同じ病気やケガで障害厚生年金を受けることが決まったとき、障害手当金は支給が停止します。

障害厚生年金の額(同時に障害基礎年金を受けられるときはその合計額)の1/360が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

※傷病手当金は会社員・公務員が受けられる制度です。会社員・公務員であれば厚生年金に加入しているので、障害厚生年金が受けられる可能性があります。

労災保険から休業補償給付を受けていた(受けている)とき

同一の病気・ケガで労災保険から休業補償給付を過去に受給していたり、現在受給していたりすると、傷病手当金は支給されません。

また、別の病因で休業補償給付を受けている期間中は、業務外の病気・ケガのために労務不能となっても傷病手当金は支給されません。

がん治療と仕事の両立をサポートする制度

がん治療にはさまざまな不安がつきまいます。

経済的な不安を取り除くサポートができるのが、わたしたちFPです。

FPは、利用できる社会保障制度の説明や家計管理、将来のライフプランなどお金に関する全般を手助けできます

がん患者さんを専門的にサポートする「一般社団法人 患者家計サポート協会」も存在しており、がん患者さんに特化したFPが手助けしてくれます。

がん治療によって襲ってくる経済的負担を少しでも軽減するために、わたしたちFPに相談してみてください。

まとめ:傷病手当金で安心して治療に専念しよう

がんと診断され、治療に専念すると仕事を休むことになります。

仕事ができないと収入が減り、生活が苦しくなるのをサポートする制度が傷病手当金です。

傷病手当金を受けることで、がん患者さんと家族の生活を保障されます。

がんの治療には多くのお金が必要になります。

経済的な負担も大きくなりますが、公的保険などを活用することで負担を軽減できます。

1人で悩むのではなく、専門家に相談すると解決の糸口が見つかるかもしれません。

FPに相談し、経済的な不安を払拭してみませんか。

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