知っておきたい!高額療養費制度で医療費の負担を軽減する方法

近年、通院しながら治療できる抗がん剤治療や放射線治療が増加しています。平均的な通院年数は2年であり、長期にわたる治療が必要です。

治療が長くなればなるほど、支払う医療費の総額も増えます。治療による経済的な負担を減らすために、高額療養費制度を設けています。

高額療養費制度とは、一月にかかる医療費が一定の金額を超えた場合に、その超えた金額分があとで払い戻される制度です。

高額療養費制度を活用することで、一月の医療費の自己負担額は約9万円に収まります(年収が約370万円〜約770万円の場合)。

本記事では、高額になりがちな医療費の負担を軽減できる高額療養費制度をまとめています。記事を読むことで、がん治療にかかる経済的な負担を減らすことで、安心して治療に専念できるでしょう。

目次

高額療養費制度とは?

参照:全国健康保険協会

高額療養費制度は、一月(1日から月末まで)に支払った医療費が自己負担額を超えた場合、自己負担限度額を超過した金額が後日払い戻される制度です。

高額療養費制度があることで、年収が約370万円〜約770万円の方の場合、自己負担額は約9万円になります。

自己負担額は収入や年齢によって異なります。

がん治療の医療費は高額になりがちです。

高額療養費制度を活用して、経済的な負担を軽減していきましょう。

高額療養費制度の対象となる医療費

高額療養費制度の対象となる医療費は「医療入院・医療外来・歯科入院・歯科外来」です。総合病院のような医科と歯科両方に対応している病院でも、分けて計算することになります。

しかし、70歳未満の方で窓口負担が21,000円以上の場合は、合計して高額療養費を請求することが可能です。

医療機関から交付された処方せんより薬局で薬を購入した場合は、高額療養費制度の対象となります。

高額療養費制度の対象とならない医療費もあり、美容外科や保険外併用療養費などが該当します。

高齢者医療制度の対象
高齢者医療制度の対象外
  • 医療入院
  • 医療外来
  • 歯科入院
  • 歯科外来
  • 入院中の食費
  • 入院中の住居費
  • 差額ベッド代
  • 先進医療にかかる費用

自己負担限度額は収入や年齢によって異なる

高額療養費制度の自己負担限度額は、収入や年齢により異なります。

収入によって5つの区分に分けられており、収入が多いほど自己負担限度額も高いです。

年齢による区分は「70歳未満」と「70歳以上」の2つに分けられています。

多くの方は、70歳未満の区分ウに該当するでしょう。

自己負担限度額=80,100円+(総医療費-267,000円)×1%

※総医療費とは、保険適用される診察費用の総額(10割)です。

一月の総医療費が50万円かかった場合、以下のようになります。

80,100円+(500,000円-267,000円)×1%=82,430円(自己負担限度額)

500,000円×30%=150,000円(窓口での3割負担額)

150,000円-82,430円=67,570円(払い戻される金額)

高額な医療費がかかっても、高額療養費制度を利用することで負担を抑えられます。

医療費をさらに軽減できる高額療養費の多数回該当

直近12ヶ月間に3回以上、高額療養費制度を利用していると4回目から多数回該当が適用されます。

多数回該当が適用されると、自己負担限度額が下がり、払い戻される金額が増えます。

参照:全国健康保険協会

高額療養費制度の手続き

加入している公的医療保険に、高額療養費の支給申請書を提出または郵送することで支給されます。

病院などの領収書の添付を求められる場合があるので、指示に従うようにしてください。

加入している公的医療保険によっては、高額療養費が適用できると知らせてくれたり、自動的に高額療養費を振り込んでくれたりと、サポートしてくれる場合があります。

詳細は加入している保険組合によって異なるので、自身が加入している公的医療保険のHPを確認してみてください。

高額療養費制度の知っておきたいポイント

高額療養費制度には、知っておきたいポイントがあります。

  • 複数の医療機関を受診した場合の手続き
  • 自己負担額は世帯合算
  • 今後の制度変更
  • 医療費の領収書の保管

それぞれを解説していきます。

複数の医療機関を受診した場合の手続き

一月で複数の医療機関を受診したとき、医療費は合算して計算されます。

合算した額が自己負担限度額を超えると、超えた額が払い戻されます。

自己負担額は世帯合算

高額療養費制度の自己負担額は世帯合算できます。

同一の公的医療保険に加入している家族が対象です。

同じ住所に住んでいる家族だけでなく、被扶養者である子どもが県外に住んでいても合算の対象となります。

しかし共働き夫婦など、別々の公的健康保険に加入しているときは、住所が同じでも合算の対象となりません。

今後の制度変更

高額療養費制度は時代によって変更されており、今後も制度が変更される可能性があります。

2018年8月に制度変更があり、2025年8月にも制度変更が決定しています。

2025年8月〜2027年8月の間で、高額療養費制度の制度が変更される予定です。

参照:毎日新聞「高額療養費制度、自己負担額が引き上げへ 25年8月から」

この制度変更によって、自己負担限度額が上昇するので、患者の負担が重くなります。

変化に対応できるように、情報収集や信頼できる専門家に助言を求めていきましょう。

医療費の領収書を保管する

高額療養費制度の利用を検討しているなら、医療費の領収書を保管しておきましょう。

高額療養費制度を申請するときに、領収書の添付を求められる場合があります。

事前に医療費が高額になるのがわかるときは限度額適用認定証

医療費が高額になるのがわかっているときは「限度額適用認定証」を活用しましょう。

限度額適用認定証があれば、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額のみになります。

手持ちのお金が少ないときでも、安心して治療できます。

限度額適用認定証は「マイナ保険証の利用」と「限度額適用認定証の利用」の2つ方法があります。

医療機関の窓口でマイナ保険証を提出(健康保険証利用登録を行ったマイナンバーカード)し、「限度額情報の表示」に同意する

※オンライン資格確認を導入している医療機関のみ利用可能

高額療養費制度のよくある質問

高額療養費制度で払い戻されるのはいつごろですか?

高額療養費制度で申請し、お金が振り込まれるのは診療月から3ヶ月ほどかかります。

公的医療保険組合が、提出した診療報酬明細書(レセプト)の審査をするため、時間がかかります。

事前に医療費が高額になることがわかっている場合は、限度額適用認定証を活用しましょう。

医療費控除制度とは何が違うのですか?

高額療養費制度と医療費控除制度は異なる制度です。

医療費控除制度は所得控除の1種であり、支払う税金が少なくできる制度です。

高額療養費制度のような支給はないので、区別して覚えておいてください。

支給申請はさかのぼって行うことはできますか?

高額療養費として申請できる医療費は、診療を受けた月の翌月の初日から2年間です。

2024年11月に診療を受けた場合、2024年12月1日から2026年11月30日まで申請できます。

2年以内であれば、申請することでお金が支給されます。

このとき医療費の領収書を保管しておくと便利です。

まとめ:高額療養費制度で安心して医療を受けよう

がん治療は長期化する傾向があり、医療費も高額になりがちです。

適用できる制度を活用しないと、経済的な負担が重くなります。

高額療養費制度を知っているだけで、自身が支払う実質的な負担が数字で確認でき、安心できるでしょう。

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