予期していない病気やケガより、医療費がかさんでいませんか?
日本は健康保険のおかげで、医療費の負担は総額の3割のみです。しかし、医療費の高騰により負担する医療費が年々上昇しています。
日本はデフレから脱却してインフレに向かっていますが、インフレ率に対して給料上昇率が追いついておらず、家計を圧迫しています。そこに医療費がかかると家計は赤字になってしまいます。
そこで家計の救世主となるのが「医療費控除」です。
医療費控除とは、1年間の支払った合計医療費が10万円以上の場合、税金を安くできる制度です。医療費控除を活用すると、税金が還付され家計の助けになります。
本記事では、医療費控除を初心者でもわかりやすく解説しています。医療費控除を知ることで、節税ができ、余裕を持った家計管理ができるでしょう。
医療費控除とは?
医療費控除は所得控除の1つであり、1年間に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合に適用される制度です。
医療費控除の金額=(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円
※保険金などで補てんされる金額は、生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などです。
1年間の総所得金額が200万円未満の人は、総所得金額の5%を超える金額が控除されます。
医療費控除の金額=実際に支払った医療費の合計額-総所得金額×5%
医療費控除の控除限度額は200万円です。限度額以上の負担した医療費は医療費控除の対象外となります。
医療費控除で得られるメリット
医療費控除で得られるメリットは節税効果です。
高額な医療費を支払うと、患者さんの家計が圧迫されます。税金の負担を少しでも抑えることで、家計に余裕ができ、治療にも専念できます。
1年間の医療費が10万円を超えた場合は、医療費控除を活用して税金の還付を狙いましょう。
医療費控除の対象となる人
医療費控除は自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も対象です。
「生活を一にする」とは?
共通の資金で生活を営んでいること
家族の医療費はもちろん、進学などで別居している子どもの医療費がある場合、仕送りをしていれば医療費控除の対象となります。
医療費控除の対象となるのは、生活を一にする人です。幅広い人が対象となるので、家族の医療費を把握しておくとよいでしょう。
医療費控除の対象となる費用
1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が、医療費控除の対象です。未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となります。
例えば、2024年12月に治療を行い、2025年1月に医療費を支払ったとき、2025年の医療費控除の対象となります。
対象となる医療費
医療費控除の対象となる医療費は以下のとおりです。
- 医者による診断・治療・入院にかかる費用
- 処方箋をもとに購入した医薬品の費用
- 医師の診断により購入した松葉杖や補聴器などの医療器具の費用
- 通院にかかる交通費
- 歯科治療の費用(保険適用外も含む)
- 子どもの歯科矯正の費用
- 介護保険の対象となる費用
- 治療を目的としたマッサージ
数多くの医療費が医療費控除の対象となります。
対象とならない費用
医療費控除の対象とならない医療費は以下のとおりです。
- ビタミン剤などの健康増進ための医薬品の費用
- 疲労回復を目的としたマッサージの費用
- 健康診断や人間ドックの費用(診断で重大な疾病がみつかり、治療を受ける場合を除く)
- 審美目的の歯列矯正の費用
- 自家用車で通院した時のガソリン代・駐車場代
医療費控除の対象とならない医療費をしっかり理解しておきましょう。
具体例①:入院費用
入院費用は基本的に医療費控除の対象となります。
入院中に提供される食事は医療費控除になりますが、コンビニや出前などで購入した食事は医療費控除の対象になりません。
- 出前や外食の費用
- 入院中の寝巻や日用品の購入費用
- 医師や看護師に対するお礼
- 自己都合で個室に入院したときの差額ベッドの費用
参照:国税庁 「No.1126 医療費控除の対象となる入院費用の具体例」
具体例②:歯科治療
歯科治療は、自由診断も含めて医療費控除の対象となります。しかし、医療費控除の対象とならないケースもあります。
例えば、子どもの歯科矯正は医療費控除の対象ですが、大人の審美を目的とした歯科矯正は医療費控除の対象外です。
- 一般的に支出される水準を著しく超えると認められる費用
- 審美目的の歯科矯正の費用
- 自家用車で通院した時のガソリン代・駐車場代
- 歯科ローンを組んだ時に発生する手数料
参照:国税庁 「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療の具体例」
具体例③:出産費用
出産費用も医療費控除の対象です。入院費用の場合と同様、基本的な費用は医療費控除の対象となります。
- 妊娠と診断されてからの定期健診や検査、通院にかかる費用
- 出産で入院する際、電車やバスなどに乗るのが困難でタクシーを利用した場合のタクシー代
参照:国税庁 「No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例」
医療費控除を受けるための条件
医療費控除を受けるには、いくつかの条件があります。
- 1年間で支払った医療費の合計が10万円以上
- 総所得金額が200万円未満の人は、総所得金額の5%を超える金額
- 1月1日から12月31日の1年間が対象
- 明細書は5年間保管
それぞれを解説していきます。
1年間で支払った医療費の合計が10万円以上
医療費控除は、1年間に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合に適用されます。
医療費控除の金額=(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円
※保険金などで補てんされる金額は、生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などです。
1回の診察や治療で10万円に達しなくても、1年間の合計で10万円を超えていたら適用されるので、しっかり計算しましょう。
総所得金額が200万円未満の人は、総所得金額の5%を超える金額
総所得金額が200万円未満の人は、その金額の5%を超える医療費が医療費控除となります。
医療費控除の金額=実際に支払った医療費の合計額-総所得金額×5%
パート勤務で年収100万円の人が1年間で7万円の医療費を支払った場合、5万円(100万円×5%=5万円)を超える金額である2万円(7万円-5万円=2万円)が医療費控除となります。
1月1日から12月31日の1年間が対象
医療費控除は1月1日から12月31日までの1年間で支払った医療費が対象です。未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となります。
家族が支払った医療費も対象となるので、しっかり集計しておきましょう。
明細書は5年間保管
病院で支払った医療費の明細書は、5年間保管しておきましょう。
医療費控除を受けるには確定申告が必須であり、内容確認のため申告後、5年間は保管しないといけません。
明細書を大事に保管しておくことで、安心して節税効果を受けられます。
医療費控除を受けるには確定申告が必須
医療費控除を受けるためには、確定申告を行わないといけません。
確定申告とは?
税金を計算し国に納付する一連の流れ
会社員であれば、税金の計算は年末調整で会社が行ってくれます。医療費控除を受けるには、年末調整で対応できず、確定申告をしないといけません。
必要な書類
確定申告で医療費控除を受けるには、病院から貰った明細書を用意しましょう。
国税庁 確定申告等作成コーナーからExcelファイル「医療費集計フォーム」をダウンロードし、記入します。
作成した「医療費集計フォーム」を確定申告で提出すれば、医療費控除が受けられます。
確定申告の方法
確定申告は近くの税務署や、自宅でパソコンやスマホで行えるe-Taxの2通りで行えます。
税務署で行う場合は、源泉徴収票と作成した「医療費集計フォーム」を持っていくと、スタッフの人に教えてもらいながら確定申告ができます。
e-Taxで行う場合は、マイナンバーカードとICカードリーダーライタが必要です。
e-Taxは自宅で行えるので便利ですが、わからないことがあると自身で調べて解決しないといけないので大変です。
確定申告に自信がない人は、税務署で行うと良いでしょう。
医療費控除の注意点
節税効果がある医療費控除ですが、いくつか注意点があります。
- 確定申告の期限
- 医療費控除の還付金を受け取るまでの期間
- 対象となる控除対象期間は1年間
- セルフメディケーション税制と併用できない
それぞれを解説していきます。
確定申告の期限
確定申告には期限があり、10万円以上の医療費を支払った翌年の2月16日〜3月16日までに確定申告をしないといけません。
しかし、医療費控除は「5年以内」ならさかのぼって申請することが可能です。確定申告を忘れていても諦めずに申告しましょう。
医療費控除の還付金を受け取るまでの期間
確定申告を行い医療費控除を受けたとき、1か月〜1か月半後に還付金が銀行口座に振り込まれます。
少し期間が空きますが、必ず振り込まれので安心してください。
対象となる控除対象期間は1年間
医療費控除は1月1日から12月31日までの1年間で支払った医療費が対象です。未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となります。
家族が支払った医療費も対象となるので、しっかり集計しておきましょう。
セルフメディケーション税制と併用できない
医療費控除には、セルフメディケーション税制という制度があります。
セルフメディケーション税制とは?
医師の処方箋を必要としない薬局・薬店で購入できる医薬品について、購入費用を所得控除の対象にできる制度
セルフメディケーション税制を利用すると、医療費控除は適用できません。
医療費控除とセルフメディケーション税制、両方が適用できる場合、節税効果が高い方を選択できます。
(対象のスイッチPTC医薬品の年間購入額)-12,000円
※控除上限額は88,000円
まとめ:医療費控除で家計を楽に!
年々増加している医療費。少しでも家計の負担を減らすためには、医療費控除を活用しましょう。
1年間の医療費の合計が10万円を超えたときに、医療費控除が利用できます。医療費控除を活用して、税金を安くして、余裕を持った家計管理をしていきましょう。
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